
能登の天然うま味調味料「いしり」の魅力に迫る


海に囲まれた日本が誇る伝統の調味料、魚醤(ぎょしょう)。魚介類を塩漬けにして発酵・熟成させて出てくる汁を漉(こ)して作った調味料です。全国各地で古くから作られてきましたが、その中でも日本三大魚醤と呼ばれているのが、秋田県の「しょっつる」、香川県の「いかなご醤油」そして石川県能登地方の「いしり(いしる)(※この記事ではいしりに表現を統一します)」です。
いしりの材料として使われる魚介類は「イワシ」と「イカ」が多いですが、「メギス」で造られたいしりを使った料理を提供しているのが、七尾駅から御祓川(みそぎがわ)沿いに歩いて5分の場所にある「いしり亭」です。
大正時代に銀行だった建物を使用しており、全体的に重厚感がある造りとなっています。
入口すぐのエリアはギャラリーとなっており、そのギャラリー横のカウンター部分と奥の部屋がお食事処です。とても落ち着いた雰囲気の中で食事を頂くことができます。
いしり亭ではほぼすべてのメニューにいしりが使われています。訪問したのは1月だったので期間限定の「MIXカキ御膳」などの「能登かき」がふんだん味わえるメニューもありました。この日はいしり亭の看板である「豆皿膳(まめざらぜん)」と膳物のオプションメニューである「いしりの貝焼き」を注文しました。
10皿が揃う豪華なお膳が豆皿膳。そして貝焼きの器がセットされています(画像)。「貝焼き」はこのお店に限らず、いしりを使った代表的な郷土料理として知られています。大きなホタテ貝の殻や小鍋(※いしり亭ではホタテ貝を模したお鍋)にいしりと野菜、魚介類が入ったものです。
豆皿膳のおかずにはすべていしりが使われています。例えば、焼き鮭の場合は鮭の表面にいしりを塗ってから焼いているそうです。塩焼きとは違ったほんのりとした優しいうま味が全体的に感じられる焼き鮭でした。煮物やかき揚げなどにも隠し味に加えられたいしりが効いており、ホッとできる深い味わいとなっていました。中でも「いしりの貝焼き」はいしりの美味しさを最も感じることができるメニューとして紹介されていて、いしりが素材の美味しさを引き立てていました。
こうした様々な素材や料理に合ういしり。入れ過ぎてしまうと臭く感じてしまったり、味が濃くなってしまう場合もあるため、その使い方が難しいと思われがちですが、いしり亭では、普段の料理シーンでもっと幅広くいしりを使ってもらおうと、オリジナル製造のいしりを店頭やインターネットで販売しています。この度リニューアルしたお醤油と同程度に塩分調整したいしりはとても使いやすくなっているそうです。そこで、いしりを使用した料理に挑戦してみることにしました。(※この黄色ラベルの新商品のいしり、「メギス魚醤」の販売に関してはいしり亭にお問い合わせ下さい。)
いしりはもともと、魚のアラや内臓といったそれまで捨てられていた部分を無駄にせず使おうとする生活の知恵から生まれた調味料です。その伝統を大切にしながら、いしりの製造工程で出る「魚油」「骨」「魚カス」という副産物を釣り餌、田んぼの土壌改良、野菜を作る畑の肥料として活用できる新製法を採用したのが、「循環型うま味調味料」としてリニューアルした今回の「メギス魚醤」なんだそうです。SDGsの理念にも通じる商品ですね。
いしりはいわば天然のうま味調味料。ほとんどの料理に使うことができるということで、敢えて和食ではなく洋食であるパスタに挑戦してみました。
2人分の材料は
メギス魚醤 小さじ2
イカ(この日はヤリイカ) 2杯
パスタ 200g
バター 8g×2パック
輪切り唐辛子 3本
ブラックペッパー 少々
にんにくみじん切り 1片
お酒 大さじ2
オリーブオイル 大さじ1強
塩 少々
まず、フライパンにバター、唐辛子、にんにくを入れて熱し、香りが出たらイカを入れます。
そこに、茹でたパスタ、「メギス魚醤」、日本酒、ブラックペッパー、オリーブオイルを入れ、最後に塩で味を調整したらできあがりです。
とてもいい香りが漂っています。イカ、にんにく、バター、オリーブオイルの風味が絶妙にマッチし、さらにいしりが奥行きを加えていて絶品の一皿でした。とてもおススメです。
このような洋のメニューにも合わせることができる天然のうま味調味料、いしり。
是非能登で直に味わい、更に皆さんのキッチンでもご活用ください。
住 所:〒926-0804 石川県七尾市生駒町16-4
営 業:平日 10:00~18:00、日曜・連休最終日 10:00~17:00
定休日:毎週水・木曜日
電 話:0767-52-8900